相続は人が亡くなることによって開始しますが、どの様な親族関係であるかによって、誰が相続人になり、どの位の相続分があるのかが変わってきますので、今回は、そのあたりをみていきましょう!

目次

相続人の順位

相続手続きの進め方パート1で誰が相続人になるのかを簡単に確認しましたが、もう少し詳しくみていきましょう。

常に相続人となる者

常に相続人となる者は、被相続人(亡くなった方)の配偶者(夫または妻)です。
被相続人が亡くなった時点で生きていれば、常に相続人となり下記の第1順位~第3順位のいずれの者とも、共同で相続人となれます。
ただし、被相続人が亡くなった時点で配偶者であることが必要で、離婚した者は相続人とはなれません。
また、内縁関係でも相続人とはなれません。

第1順位の相続人

第1順位の相続人は被相続人の子及びその代襲相続人です。
第1順位なので、子がいれば常に相続人となります。
代襲相続人ですが、被相続人の亡くなった時よりも前に、その子が亡くなっていた場合に、その子に子(被相続人の孫)がいれば第1順位の相続人となります。
この子ですが、実の子以外に養子も含まれます。
養子の子が代襲相続人となるかについては、養子となる前に生まれている養子の子は代襲相続人とならず、養子となった後に生まれた養子の子は代襲相続人となります。
これは、養子縁組の前に生まれた子は養親(縁組によって養子の親となった者、この場合は被相続人)とは親族関係が発生しないためです。
子や孫のことを直系卑属と言いますが、直系卑属の代襲相続は、子や孫だけではなくその下の世代でも可能です、あまり無いとは思いますが。
この第1順位の相続人がいる場合は、以下の第2順位、第3順位の者は相続人となりません。

第2順位の相続人

第2順位の相続人は、直系尊属です。
この直系尊属とは被相続人の父母や祖父母、つまり上の世代です。
第2順位は第1順位の相続人がいない時なので、子や孫がいなかった又は全て亡くなっている場合と言う事になります。
ただし、配偶者がいてもいなくても相続人になります。
直系尊属は被相続人に親等が近い者が相続人になるので、父母がいる場合は祖父母は相続人となりません。
またこの父母は実の父母だけでなく、養子縁組をしている場合は、その養親も相続人となります。
なので、父母が4人ということもあり得ます。

第3順位の相続人

第3順位の相続人は兄弟姉妹とその代襲相続人です。
第1順位と第2順位の相続人がいない場合に兄弟姉妹が相続人となります。
また、この兄弟姉妹の中で被相続人よりも先に亡くなった兄弟姉妹がいる場合で、その兄弟姉妹に子がいる場合はその子は代襲相続人となります。
兄弟姉妹の代襲相続は直系卑属の代襲相続と違い、兄弟姉妹の子までしか相続人となりません。
被相続人からすると甥や姪までと言う事になります。
この兄弟姉妹の特殊な例で、半血の兄弟姉妹というものがあります。
これは、父母のどちらか一方を同じ親とする兄弟姉妹を言いますが、この半血の兄弟姉妹も相続人となります。

相続人の組み合わせ

上で見てきたように、相続人の組み合わせは複数あり、下記のように7パターンになります。
①配偶者のみ
②配偶者と子(代襲者)
③配偶者と直系尊属
④配偶者と兄弟姉妹(代襲者)
⑤子(代襲者)のみ
⑥直系尊属のみ
⑦兄弟姉妹(代襲者)のみ

相続放棄で相続人が変わる

相続放棄とは、家庭裁判所に相続放棄をする旨の申述をすることによって行います。
遺産分割協議で、自分は何も要らないと言って相続しなかったこととは、根本的に異なりますので注意してください。
この相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内にしなければなりません。
また、この相続放棄は複数の相続人がいる場合でも単独ですることができます。
そうすると、例えば第1順位の相続人が1人のとき、その方が相続放棄をすると、第2順位の人が思いがけずに相続人となります。
ですので、この相続放棄は注意が必要です。
相続放棄は、被相続人に大きな借金などがあるときに、その債務から逃れるために行うことがほとんどでしょう。
その様な時に第1順位の相続人が相続放棄をすると、第2順位の方が相続人となり借金を背負う事になってしまいますので、この様な時は第3順位になる人まで全員で相続放棄をする必要があります。

法定相続分

被相続人の遺言書がない場合は、民法の規定で相続分が決まります。
これを法定相続分と言いますが、配偶者と相続順位の組み合わせによって相続分が変化します。

同順位単独の相続人のとき

これは、上記相続人の組み合わせでみたときの、同順位の方のみ場合の話です。
まず、配偶者が単独で他に相続人がいない時は、当然一人なので全て相続し相続分は1分の1となります。
また、第1順位の相続人でも第2順位の相続人でも同順位の方が複数いる場合は均等になりますので、例えば3人であれば、各自が3分の1の相続分となります。
第3順位の相続人も原則は均等なのですが、この中に半血の兄弟姉妹(父母の片方が同じ)がいる場合は、全血の兄弟姉妹(父母の両方が同じ)の2分の1の法定相続分となります。
例えば、兄弟姉妹が3人いて、全血の兄弟姉妹が2人と半血の兄弟姉妹が1人の場合は、全血の兄弟姉妹が各5分の2、半血の兄弟姉妹が5分の1の法定相続分となります。

配偶者との組み合わせの場合

配偶者と第1順位の子(代襲者)の場合は、2分の1ずつになり、例えば、子が2人のときは子2人が全体の2分の1を2人で分けるので、配偶者2分の1、子が各自4分の1となります。
配偶者と第2順位の直系尊属の場合は、配偶者が3分の2で直系尊属が3分の1となり、直系尊属が複数いる場合は3分の1をその人数で均等割りします。
配偶者と第3順位の兄弟姉妹の場合は、配偶者が4分の3で兄弟姉妹が4分の1となりますが、この場合でも、全血の兄弟姉妹と半血の兄弟姉妹がいる場合は、半血の兄弟姉妹は全血の兄弟姉妹の2分の1となります。

相続人になれない場合

本当は相続人ですが、相続人になれない場合があり、それが欠格と廃除です。

相続の欠格

民法の第891条に相続人の欠格事由が規定されており次のようになります。
次に掲げる者は、相続人となることができない。
1、故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
2、被相続人の殺害されたことを知ってこれを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
3、詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
4、詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
5、相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
この上記の様な行為があった場合には、相続人としての資格がなくなります。

推定相続人の廃除

遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をしたり重大な侮辱を加えたりした場合には、被相続人はその推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます。
推定相続人とは、相続が開始したときに相続人となるべき者のことをいい、遺留分を有する推定相続人とは、配偶者、第1順位、第2順位の相続人のことをいいます。
また遺留分とは、法律上取得することが保障されている相続財産の一定の割合のことをいいます。
なので、被相続人との関係で配偶者や子または孫、父母や祖父母も含まれますが、この様な相続人になりうる人から虐待やひどい侮辱を受けたときには、生前であれば家庭裁判所に請求しまた、遺言書でも廃除をすることができます。

同時死亡の推定

同時死亡の推定とは、どの様なことなのでしょうか?
民法第32条の2にこの様な条文があります。
数人の者が死亡した場合において、そのうちの1人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。
例えば、自動車事故などで、数人の者が死亡したときには、その死亡の先後が明らかでないときは、同時に死亡したと推定するという制度です。
推定ということなので、誰かが少しでも長く生きていことが判れば、くつがえります。
相続で問題になるのは、同時に死亡したのか、少しでも長く生きていたのかで、相続人が変化するということです。
次の様なケースで考えてみます。

同一の交通事故で親子が亡くなった場合

大きな資産(6億円)を持っている父Aとその配偶者の母Bの間に息子Cがおり、その息子には配偶者として嫁のDがいます。
この家族の内、父Aと息子Cが同じ自動車に乗っていて、事故のために亡くなってしまいました。
この場合の相続人はどうなるでしょうか?
   

息子が父より長く生きていた場合

息子Cが父Aより少しでも長く生きていた場合の相続人は、まず母Bと少しでも長く生きていた息子Cが相続人となります。
そうすると、父の財産6億円は母Bが3億円、息子Cが3億円を相続し、その後息子Cが亡くなったので、その相続は息子の嫁Ⅾが息子が相続した3億円の内2億円を、母Bが1億円を相続することになり、結局のところ母Bが4億円と、嫁Ⅾが3億円を相続することになります。

父と息子が同時に亡くなった場合

この場合には、息子Cが父Aを相続しないため、母Bが単独で相続人となり、父の財産6億円を全て相続することになり、嫁Ⅾは相続人ではないので、1円も相続することができなくなります。
ただし、息子Cと嫁Ⅾの間に子があれば、Cを代襲して母Bと共に相続人となることができます。