成年後見制度とは、どのようなものなのでしょうか?

成年後見制度について、見ていきましょう!

目次

成年後見制度の概要

成年後見制度は、精神上の障害により判断能力が無くなった人や不十分な人を保護し支援するために、援助者を選んで契約等を代わって行ったり、誤った判断でした行為を取り消したりして、判断能力の無くなった人や不十分な人を法律的に支援する制度です。

支援するために、選んだ援助者のことを後見人等といいます。

判断能力の無い人不十分な人とは?

判断能力の無い人や不十分な人とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者、自閉症の方、事故などによる脳の損傷、脳の疾患による精神上の障害を持つ人などのことをいいます。

援助者(後見人等)は何をするの?

援助者(後見人等)は契約の締結などの法律行為で意思決定が出来ない人のために、不十分な判断能力を補い損害を受けないようにして、権利が守られるように財産管理と身上監護を行い保護します。

身上監護とは、生活・治療・療養・介護などに関する法律行為を行うことです。
例えば、住居の確保、生活環境の整備、施設等の入退所手続きや契約、治療や入院の手続きなどです。

成年後見制度の3つの理念

成年後見制度は以下の3つの理念が重要視されています。

★自己決定の尊直

★残存能力の活用

★ノーマライゼーション

自己決定の尊直

援助者(後見人等)はその仕事を行うに当たって、本人の意思を大切にしなければなりません。
また、本人の利益の保護と同時に自己決定権の尊重を優先しなければなりません。

自分のことは自分で決めるという自己決定と、援助者による本人の保護のバランスを取りながら支援をしなければならないということです。

残存能力の活用

障害のある人が自分らしく生活を送るために、本人の失われた能力に注目するのではなく、何ができて何ができないのかを見極めて、残されている能力を活用して生活できるようにすることが必要です。

ノーマライゼーション

ノーマライゼーションとは、障害のある人も家庭や地域で一般の人と同じような普通の生活、権利などが保障されるような環境整備を行うことを意味し、この理念に基づいて環境整備を行わなければなりません。

バリアフリーやユニバーサルデザインは、この理念実現のための手段です。

法定後見と任意後見

成年後見制度は大きく法定後見と任意後見に分けられます。

法定後見は、判断能力が既に低下した方または失われた方のための制度であり、後見・保佐・補助の3類型に分けて援助者を選んで本人を保護する制度であり、家庭裁判所に申し立てを行い利用する制度です。

任意後見は、将来判断能力が低下した場合に備えて事前に依頼していた後見人に日常生活、財産管理、身上監護などの手続きを委託する契約です。

法定後見

法定後見は、既に判断能力が低下又は判断能力が無くなった人を保護するための制度で、家庭裁判所に申し立てを行いその方に合った後見人等を選任してもらう制度です。
制度発足当時は、親族の後見人等も多く選任されたようですが、色々と不祥事(後見人の財産を横領する等)もあり、最近は(ご本人の財産の程度によってもちがうようですが)専門職の方が後見人等として選任されることが多いようです。

法定後見の分類

法定後見は上でも書きましたが、既に判断能力が低下した方や失われた方のための制度で、その能力の程度に応じて下記のような分類になります。

★後見
 法律の条文でいうと、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある者」となりますが、物事を判断することができないということです。

★保佐
 同じく条文の文言は、「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」となり、判断能力が低いですが全くないというわけではない方です。

★補助
 同じく条文の文言は、「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」となり、この三類型の中では、判断能力がそこそこある状況の方となります。

家庭裁判所への申し立て

法定後見を申し立てるには、管轄の家庭裁判所に申し立て書を作成して申し立てします。
この時の書類は、各家庭裁判所のホームページからダウンロードできますので、ご確認ください。

この書類は、大まかには本人に関すること、家族に関すること、親族関係図、財産目録、後見人候補者に関すること、収支の予定などを記載して提出します。
また成年後見制度における診断書、その他戸籍謄本なども必要になります。
詳しくお知りになりたい方は、家庭裁判所のホームページをご覧ください。

この申し立てができる方は、以下の方になります
●こ本人(後見開始の審判を受ける者)
●配偶者
●四親等内の親族
●未成年後見人
●未成年後見監督人
●保佐人
●保佐監督人
●補助人
●補助監督人
●検察官
●任意後見契約が登記されているときは,任意後見受任者,任意後見人及び任意後見監督人も申し立てることができます。

この申し立てにより家庭裁判所は、審判を行い後見人等を選任しますが、必ずしも後見人候補者として記載して提出した方が選任されるとはかぎりませんので注意が必要です。

任意後見

任意後見は将来の認知症等になることを考えて、正常な判断能力があるうちに、信頼のできる人を将来の後見人として決めて契約を交わしておくものです。

任意後見の利用はどの様にするの?

将来後見人となってくれる人のことを、任意後見受任者といいますが、この方と本人が契約を交わすことで、任意後見を利用する準備ができますが、この契約書は公正証書で作らなければ契約書が無効になってしまいますので注意が必要です。

公正証書は、公証人によって作成される書類なので、公証人役場へ行くか公証人に出張してもらうかして、必ず公証人と会って契約の意思を確認して契約を結ぶ必要があります。

契約書を作成した後に本人の判断能力が低下したと任意後見受任者が判断すると、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てを行い、任意後見がスタートします。
この申し立てをする人は、任意後見受任者以外に、配偶者、四親等内の親族、また本人に判断能力が残っていれば本人もできます。

また任意後見監督人は任意後見人が正しく後見の仕事をしているかを監督する人です。

任意後見受任者は誰がなるの?

任意後見受任者は、次の項目に該当しない方であれば、誰でもなることができます。
 ★未成年
 ★家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人又は補助人
 ★破産者
 ★本人に対して訴訟をし、又はした者とその配偶者及び直系血族
 ★行方の知れない者

このような方でなければ任意後見受任者になることができるので例えば、子供、甥、姪あるいは第三者でもなれます。

法定後見の場合は、後見人候補者として名前を書いて家庭裁判所に提出することができますが、誰を後見人に選任するかは家庭裁判所の判断になり、希望がかなうとはかぎりません。

最近は親族の後見人の選任は少なくなってきており、法定後見においては専門職の選任が多いと言えます。

任意後見受任者を親族等にすることで、その報酬を無償にしたり、低く抑えることが可能になり、法定後見で専門職が後見人になった場合よりも経済的に負担が少なるなりますが、任意後見が発動した場合は任意後見監督人を必ず家庭裁判所によって選任してもらわなければならないので、その分の費用は発生します。

任意後見契約の種類

任意後見についても、種類があり、将来型、即効型、移行型と三種類あります。

●将来型
 将来判断能力が低下した場合に備えて任意後見だけを結ぶ契約です。
●即効型
 既に判断能力が不十分でも自分で後見人を選任する能力のある人がすぐに契約を発行させる方法です。
●移行型
 本人の判断能力があるうちに、あらかじめ見守り契約や財産管理等委任契約を結んでおき、判断能力が不十分になった時点で任意後見に移行していく方法です。

任意後見でできないこと

任意後見人に依頼してもできないこともあります。

ご本人(被後見人)の介護行為、身元保証や身元引受人になること、医療行為への同意、延命治療の指示、死後事務委任の五つとされています。
任意後見契約は、本人が生きているときの財産管理などを目的とした契約であり、本人の死亡と同時に終了しますので、別途「尊厳死宣言書」「死後事務委任契約」も締結し、また遺言書もセットで対処しておくことが大切ではないでしょうか。